「ガリガリと異音がする」「落としてからパソコンが起動しない」「外付けHDDを認識しなくなった」――突然のハードディスク(HDD)のトラブルに、冷や汗をかいた経験はありませんか? もしかしたら、それは物理的な破損かもしれません。物理障害と聞くと、「もうデータは諦めるしかない」と絶望的な気持ちになる方もいるでしょう。
しかし、物理的に壊れてしまったHDDでも、データ復旧を諦める必要はありません。多くの場合、専門の技術と設備があれば、大切なデータを取り戻すことが可能です。仕事の重要ファイル、家族との思い出の写真、かけがえのない動画…失われたと思ったデータが戻ってくる可能性は十分にあります。
この記事では、「物理的に壊れたHDDは復旧できるのか?」というあなたの疑問にお答えします。HDDの物理障害がどのようなものか、そして実際にデータ復旧に成功した驚きの事例を交えながら、復旧の可能性を詳しく解説。さらに、気になるデータ復旧にかかる費用相場や、復旧を成功させるためにあなたが取るべき行動とNG行動まで、網羅的にご紹介します。
この記事を読めば、以下のことが明確になります。
- 物理障害のHDDからデータが復旧できる理由と、その難易度
- 落下や経年劣化など、様々な物理障害からの復旧成功事例
- データ復旧にかかる費用の目安と、賢い依頼先の選び方
もう大切なデータを失う心配はありません。この記事を読み進めて、失われたデータを取り戻すための第一歩を踏み出しましょう。
HDDの物理障害とは?症状とデータ復旧の難易度
HDDに保存されたデータにアクセスできなくなったとき、その原因は大きく分けて「論理障害」と「物理障害」の2種類があります。論理障害はデータそのものやファイルシステムの問題ですが、物理障害はHDD本体が物理的に損傷している状態を指します。物理障害が起こると、データへのアクセスが不可能になるだけでなく、無理な通電や操作によってさらに状態が悪化し、復旧が困難になる可能性が高まります。
物理障害の主な症状(異音、認識しないなど)
HDDの物理障害が発生すると、様々な異常な症状が現れます。これらの症状に気づくことが、データ復旧の可能性を高める第一歩となります。
- 異音の発生: 「カチカチ」「カリカリ」「キーン」といった、普段は聞こえないような異常な音がHDDから聞こえる場合、ヘッドの損傷やプラッタへの接触、モーターの故障など、深刻な物理障害が起きている可能性が高いです。特に「カチカチ」という音は、ヘッドが正常に動作せず、何度も読み書きを試みているサインで、非常に危険な状態です。
- HDDが認識しない/読み込まない: パソコンに接続しても、HDDが認識されなかったり、エクスプローラーに表示されなかったりする症状です。ケーブルの接触不良などの単純な原因もありますが、HDD内部の基板や部品の故障による物理障害の可能性も考えられます。
- OSが起動しない/フリーズする: OSがHDDから読み込まれる際に、物理障害によって正常にデータが読み取れないため、起動中にエラーが表示されたり、途中でフリーズしてしまったりすることがあります。
- ファイルやフォルダが開けない/破損している: 特定のファイルやフォルダにアクセスしようとするとエラーが表示されたり、データが破損していると警告されたりする場合も、HDDの一部の領域に物理的な損傷がある可能性があります。
- 焦げ臭いにおい: HDD内部の回路がショートするなどして、焦げたような異臭がする場合、基板などの部品が焼損している可能性が高いです。すぐに電源を切り、通電を中止してください。
これらの症状が見られた場合、通電を続けたり、何度も再起動を試みたりすることは、HDDの状態をさらに悪化させ、復旧を不可能にするリスクを高めます。すぐに電源を切り、専門家への相談を検討することが重要です。
物理障害が起こる原因と内部構造
HDDの物理障害は、主に以下のような原因で発生します。これらの原因を理解することで、HDDの取り扱いにおける注意点が見えてきます。
- 落下・衝撃: HDDは精密機器であり、特に動作中に衝撃が加わると、読み書きを行うヘッドがデータ記録面(プラッタ)に接触し、傷つけてしまう「ヘッドクラッシュ」などの深刻な物理障害を引き起こすことがあります。
- 経年劣化: HDDの部品には寿命があり、長期間の使用によって摩耗したり、劣化したりすることで、モーターやヘッド、基板などが故障することがあります。
- 水没・浸水: 水は電子機器にとって大敵です。HDD内部に水が浸入すると、回路がショートしたり、記録面にサビが発生したりして、データが読み取れなくなります。
- 落雷・過電流: 落雷や電力サージなどによる過度な電流は、HDDの基板を焼損させ、起動不能に陥らせることがあります。
- 製造上の初期不良: ごく稀に、製造段階での不具合が原因で物理障害が発生することもあります。
HDDの内部は、高速で回転するプラッタ(データを磁気で記録する円盤)、プラッタ上を移動してデータの読み書きを行うヘッド、これらを制御するPCB(基板)、そしてモーターなどで構成されています。これらの部品は非常にデリケートであり、わずかな異常でもデータへのアクセスを阻害し、物理障害を引き起こす要因となります。
物理障害時のデータ復旧の難易度
物理障害のHDDからのデータ復旧は、論理障害に比べて非常に難易度が高いとされています。その理由は、以下の点にあります。
- 専門設備が必要: 物理障害の復旧作業は、チリやホコリが原因でさらなる損傷を引き起こさないよう、クリーンルームという特殊な環境で行う必要があります。一般的なオフィスや家庭での作業は不可能です。
- 高度な技術と経験: HDDの種類や障害内容によって、適切な部品交換や調整、データの読み出し方法が異なります。熟練したエンジニアの専門知識と豊富な経験が不可欠です。
- 部品の調達: 損傷した部品を交換するためには、同型番の正常なHDDから部品を調達する必要があります。これは専門業者でなければ難しいことです。
- 精密作業: ヘッドやプラッタなど、ナノレベルの精度で動作する部品を扱うため、非常に精密な作業が求められます。
これらの理由から、物理障害が発生したHDDのデータ復旧は、個人で行うことはまず不可能であり、専門のデータ復旧業者への依頼が唯一の現実的な選択肢となります。安易な自己判断や、知識のない状態での操作は、復旧の可能性を完全に閉ざしてしまうことにも繋がりかねません。症状が見られたら、すぐに通電を止め、専門家へ相談することがデータ復旧成功への最も重要な鍵となります。
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このように、HDDの物理障害は深刻な状態ですが、決して諦める必要はありません。次のセクションでは、実際に物理障害からデータ復旧に成功した驚きの事例をご紹介し、復旧の希望を具体的に見ていきましょう。
物理障害HDDのデータ復旧、成功事例から見る希望
前述の通り、HDDの物理障害は非常に深刻で、個人での復旧はほぼ不可能です。しかし、専門のデータ復旧業者に依頼することで、絶望的な状況から大切なデータを取り戻せたケースは数多く存在します。ここでは、実際にデータ復旧に成功した具体的な事例をいくつかご紹介し、物理障害からの復旧がいかに専門技術によって可能になるかをお伝えします。
HDD落下・衝撃による物理障害の復旧事例
HDDは精密機器であるため、落下や衝撃には非常に弱いです。しかし、そのような物理的なダメージを受けたHDDでも、適切な処置を施せばデータを取り戻せる可能性があります。
事例1:外付けHDD落下による異音発生からの復旧
- 症状: 外付けHDDを誤って床に落としてしまい、それ以降「カチカチ」という異音が鳴り続け、パソコンに認識されなくなった。重要な業務データが大量に保存されており、焦りを感じていた。
- 復旧作業: 専門業者がHDDをクリーンルームに搬入し、内部を開封。確認したところ、読み取りヘッドがプラッタに接触し、損傷している状態でした。破損したヘッドを交換後、特殊な装置でプラッタからデータを慎重に読み出し、正常なHDDへ転送する作業を実施。
- 結果: データの95%以上の復旧に成功。特に重要だった業務ファイルはすべて復旧でき、お客様は安堵されました。異音がする状態での通電停止が早かったことが、復旧率を高めた要因の一つと判断されました。
事例2:ノートパソコン転倒による起動不能からの復旧
- 症状: ノートパソコンを使用中に誤って転倒させてしまい、それ以降OSが起動しなくなった。HDDから「カリカリ」という音が聞こえる。数年分の個人的な写真や動画が内蔵HDDに保存されており、何とか復旧したいとご依頼。
- 復旧作業: 内蔵HDDを取り出し診断したところ、ヘッドが完全に故障し、プラッタにも一部傷がついていることが判明。交換用のヘッドと専用ツールを用いてデータの読み出しを試行錯誤。傷ついた部分のデータを避ける特殊な技術を駆使し、損傷が少ない領域から優先的にデータを抽出。
- 結果: 完全な100%復旧とはなりませんでしたが、お客様が最も重要視していた写真や動画データはほぼ全て復旧に成功しました。物理的な衝撃による損傷でも、熟練した技術があれば希望があることを示す事例です。
経年劣化・故障による物理障害の復旧事例
HDDは消耗品であり、長期間使用していると経年劣化によって部品が故障することがあります。これもまた、専門業者による復旧が有効なケースです。
事例3:NAS(ネットワークHDD)のHDD経年劣化による認識不良
- 症状: 数年間稼働していた企業で使用しているNASのHDDが1台認識しなくなり、データにアクセスできなくなった。定期的にバックアップは取っていたものの、最新のデータが消失する危機に直面。
- 復旧作業: 診断の結果、HDDのモーター部分が劣化し、プラッタが正常に回転しない「スピンドルモーター固着」という物理障害が判明。クリーンルーム内でモーターの修復・調整を行い、データが読み出せる状態にした後、専用機器でデータを抽出し、代替ストレージへ保存。
- 結果: ほぼ100%のデータ復旧に成功。業務の停止を最小限に抑え、お客様の事業継続に貢献できました。経年劣化による部品の故障も、部品交換や修理によって復旧できる可能性があります。
事例4:長年使用した外付けHDDの突然の故障
- 症状: 10年以上前に購入した外付けHDDが、突然電源が入らなくなり、まったく反応しなくなった。過去の個人プロジェクトのデータがすべて入っており、非常に困っていた。
- 復旧作業: HDDの基板(PCB)を診断したところ、経年劣化による電子部品の故障が原因と判明。同型番のHDDから正常な基板を調達し、交換。その後、専用のツールでHDDを起動させ、データの読み出しを実施。
- 結果: データ90%以上の復旧に成功。長期間使用したHDDの故障でも、適切な診断と部品交換によってデータを取り戻せる可能性があることを示しました。
その他の物理障害からの復旧事例
落下や経年劣化以外にも、予期せぬトラブルで物理障害が発生するケースがあります。
事例5:水没したHDDからのデータ復旧
- 症状: ノートパソコンが水没し、内蔵HDDも水に浸かってしまった。乾燥を試みたが、通電すると異音がして認識されない。海外旅行の写真データが失われる危機に直面。
- 復旧作業: 水没によりHDD内部に水分が浸入し、プラッタ表面にサビや汚れが付着、ヘッドも損傷している状態でした。クリーンルーム内でプラッタの洗浄、ヘッドの交換を行い、乾燥後に特殊な装置でデータ読み出し。
- 結果: お客様が特に復旧を希望していた写真データはほぼ全て復旧。水没直後に電源を入れなかったこと、迅速に専門業者へ依頼したことが復旧の鍵となりました。水没は復旧が難しいケースですが、諦めずに相談することが大切です。
これらの事例からわかるように、HDDの物理障害は一見絶望的に見えても、専門の知識、技術、そしてクリーンルームのような特殊な設備があれば、データ復旧は十分に可能です。大切なデータを諦める前に、まずはデータ復旧の専門家に相談することが、成功への唯一の道と言えるでしょう。
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多くの成功事例がある一方で、データ復旧には費用がかかることも事実です。次のセクションでは、物理障害HDDのデータ復旧にかかる費用の相場と、費用を抑えるためのポイントについて詳しく解説します。
物理障害HDDのデータ復旧にかかる費用と相場
物理障害を負ったHDDのデータ復旧には、高度な技術と専門設備が必要となるため、ある程度の費用がかかります。しかし、費用は障害の状況や復旧業者によって大きく変動するため、事前にその構成要素や相場を理解しておくことが重要です。
データ復旧費用の構成要素
データ復旧費用は、主に以下の要素によって構成されています。
- 初期診断料: 多くの専門業者では、復旧作業に取り掛かる前に、HDDの状態や障害の原因、復旧の可否、および概算費用を診断するための料金が発生します。無料診断を実施している業者もありますが、一部では診断料がかかる場合があるので、事前に確認が必要です。
- 復旧作業料: これが費用の大半を占めます。HDDの障害レベル(軽度、中度、重度)やデータ容量によって費用が変動するのが一般的です。物理障害の場合、部品交換やクリーンルームでの作業が必要になるため、論理障害よりも費用が高額になる傾向があります。
- 部品代: ヘッドや基板、モーターなどの部品交換が必要な場合、その部品の調達費用が加算されます。特に希少な部品や海外からの取り寄せが必要な場合は、高額になることがあります。
- メディア代: 復旧したデータを保存するための新しいストレージ(HDDやSSD、USBメモリなど)の費用です。依頼者が事前に用意することも可能ですが、業者に手配してもらう場合は別途料金が発生します。
- その他手数料: 緊急対応のための特急料金、復旧データ検証費用、郵送費などが含まれる場合があります。
これらの要素を総合して、最終的な費用が算出されます。特に注意したいのは、「成功報酬制」を採用している業者とそうでない業者がある点です。成功報酬制であれば、データ復旧ができなかった場合に費用が発生しないため、安心して依頼しやすいでしょう。
物理障害の復旧費用相場
物理障害のHDDデータ復旧費用は、数万円から数十万円と非常に幅が広いのが実情です。これは、障害の重さやHDDの種類、容量によって大きく異なるためです。
- 軽度物理障害(例:基板故障、軽微なファームウェア破損など): 5万円~15万円程度
比較的簡単な部品交換やファームウェアの修正で対応できる場合です。異音などがなく、突然認識しなくなった場合に該当することがあります。 - 中度物理障害(例:軽度のヘッド障害、不良セクタ増加など): 15万円~30万円程度
ヘッドの交換やプラッタへの軽い傷、不良セクタが広範囲に及ぶ場合など、クリーンルームでの作業が必要になるケースです。異音がする、読み書きが遅いといった症状が見られます。 - 重度物理障害(例:ヘッドクラッシュ、モーター固着、プラッタ深刻な損傷など): 30万円~80万円以上
最も深刻なケースで、複数の部品が損傷していたり、プラッタに深い傷が入っていたりする場合です。特に異音が大きい、焦げ臭いなど、明らかに物理的な破損が疑われる状態です。復旧が極めて困難な場合、100万円を超えるケースも稀にあります。
上記はあくまで一般的な相場であり、実際には個々のケースによって診断後の見積もりで確定します。特に、NASやRAID構成のHDDの場合、複数のHDDが関わるため、費用がさらに高額になる傾向にあります。
複数の業者から見積もりを取り、内訳を比較検討することをおすすめします。ただし、極端に安価な業者には注意が必要です。適切な設備や技術がないために復旧できない、あるいは初期診断後に高額な追加費用を請求されるといったトラブルに繋がる可能性もあります。
費用を抑えるための注意点
高額になりがちな物理障害のデータ復旧費用を少しでも抑えるためには、以下の点に注意しましょう。
- 症状発生後、すぐに通電を止める: HDDに異常が見られたら、すぐに電源を切り、それ以上の通電を避けてください。通電を続けることで、障害が悪化し、復旧費用が高くなったり、最悪復旧不能になったりするリスクが高まります。
- 自己判断での操作をしない: 自分でHDDを開封したり、叩いたり、分解したりすることは絶対に避けてください。わずかなホコリや静電気でプラッタが損傷し、復旧が不可能になることがあります。市販の復旧ソフトも物理障害には効果がなく、かえって状態を悪化させる可能性が高いです。
- 無料診断を活用する: 多くの専門業者が無料診断を提供しています。まずは診断を受けて、障害の程度や復旧の可能性、概算費用を確認しましょう。複数の業者で診断を受け、比較検討することも有効です。
- 成功報酬制の業者を選ぶ: データ復旧が不成功に終わった場合に費用が発生しない「完全成功報酬制」の業者を選べば、無駄な出費を避けることができます。ただし、診断料やキャンセル料については事前に確認が必要です。
- 見積もりの内訳をしっかり確認する: 提示された見積もりには、どのような費用が含まれているのか(診断料、復旧作業料、部品代、メディア代、特急料金など)を細かく確認し、不明な点があれば質問して納得した上で依頼しましょう。
データ復旧は時間との勝負でもあります。費用を心配するあまり対応が遅れると、復旧率が低下し、結果的に高額な費用がかかったり、復旧自体が不可能になったりすることも考えられます。まずは冷静に状況を把握し、信頼できる専門業者に迅速に相談することが、データを取り戻すための賢い選択と言えるでしょう。
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費用について理解を深めたところで、次はいよいよ、物理障害HDDのデータ復旧を成功させるために、具体的にどのような行動を取るべきか、そして避けるべき行動について解説します。
物理障害HDDのデータ復旧を成功させるために
ここまで、HDDの物理障害の深刻さや、専門業者による復旧事例、そして費用について解説してきました。物理障害からのデータ復旧は高度な技術と設備が必要ですが、正しい行動と適切な業者選びによって、大切なデータを取り戻せる可能性は飛躍的に高まります。ここでは、あなたがデータ復旧を成功させるために知っておくべき重要なポイントを解説します。
障害発生直後のNG行動
HDDに物理障害が発生した際、焦りからついやってしまいがちな行動が、実は復旧の可能性を著しく低下させる「NG行動」です。これらの行動は絶対に避けてください。
- 通電を続ける・何度も電源のON/OFFを繰り返す: 最も危険なNG行動です。物理的に損傷したHDDは、通電を続けることでヘッドがプラッタを傷つけ、データ記録面を破壊する「スクラッチ」を引き起こす可能性があります。特に異音がしている場合は、ヘッドがプラッタに接触しているサインであり、瞬く間に状況を悪化させます。異変を感じたら、すぐに電源を切り、それ以上通電しないでください。
- HDDを叩く・振る: 「衝撃を与えれば直るかも」という誤った情報や、焦りからHDDを叩いたり振ったりすることは、絶対にやってはいけません。内部の精密部品がさらに損傷し、ヘッドやプラッタの状態を致命的に悪化させる原因となります。
- 自分でHDDを開封する: HDDの内部は、ホコリ一つ許されないクリーンな環境で製造されています。一般家庭やオフィス環境で開封すると、空気中の微細なチリやホコリがプラッタに付着し、致命的な損傷を引き起こします。一度開封してしまったHDDは、専門業者でも復旧が困難になるか、費用が大幅に高額になるリスクがあります。
- 市販のデータ復旧ソフトを試す: 市販のデータ復旧ソフトは、主に論理障害(誤削除、フォーマットなど)に有効なツールです。物理障害の場合、HDD自体が正常に動作しないため、ソフトを使ってもデータは読み取れません。むしろ、ソフトを起動させるために通電を続けることで、上述の「通電を続ける」ことによる悪化リスクを伴います。
- 安易に個人で修理を試みる: インターネット上の情報だけを頼りに、自分で部品交換や基板のハンダ付けなどを試みるのは非常に危険です。専門知識と経験、そして専用の工具や設備がなければ、ほとんどの場合、かえって状況を悪化させ、二度と復旧できない状態にしてしまいます。
これらのNG行動は、あなたのデータを永久に失わせる可能性があります。HDDに物理障害が疑われる症状が出たら、まずは電源を切り、そのままの状態で専門業者に相談することが、データ復旧を成功させるための鉄則です。
信頼できるデータ復旧業者の選び方
データ復旧業者選びは、データ復旧の成否を左右する最も重要な要素です。数多くの業者がある中で、信頼できる業者を選ぶためのポイントを押さえましょう。
- 復旧実績と専門性: 物理障害の復旧は高度な技術を要するため、豊富な復旧実績があるか、特に物理障害の復旧に特化した専門部署やエンジニアがいるかを確認しましょう。ウェブサイトで過去の成功事例が公開されているかも参考になります。
- クリーンルームを保有しているか: 物理障害の復旧には、ISO規格に準拠した「クリーンルーム」が必須です。自社でクリーンルームを保有しているか、または提携先のクリーンルームで作業を行うのかを確認してください。これは業者の設備レベルを測る重要な指標です。
- 診断・見積もりが明確か: 初期の診断で、障害の原因、復旧の可能性、そして概算費用を明確に提示してくれる業者を選びましょう。費用体系が不明瞭だったり、診断前に高額な料金を提示したりする業者には注意が必要です。可能な限り、無料診断を提供している業者で複数の見積もりを取ることをお勧めします。
- 成功報酬制を採用しているか: データ復旧ができなかった場合に費用が発生しない「完全成功報酬制」の業者であれば、安心して依頼できます。ただし、診断料やキャンセル料、復旧データ検証料など、別途発生する費用がないかも確認しておきましょう。
- セキュリティ体制: 大切なデータを取り扱うため、情報セキュリティ対策が万全であるか(ISMS認証の取得、プライバシーマークの取得など)も確認が必要です。個人情報保護に対する意識が高い業者を選びましょう。
- 対応の速さとサポート体制: 障害発生時は一刻を争う場合があります。緊急対応が可能か、電話やメールでの問い合わせに迅速かつ丁寧に対応してくれるかどうかも、業者選びの重要なポイントです。
これらのポイントを踏まえ、焦らず慎重に業者を選定することが、大切なデータを取り戻すための賢い選択となります。
無料診断の活用
データ復旧業者の中には、無料診断を提供しているところが多数あります。この無料診断は、データ復旧を依頼する上で非常に有効なサービスです。
- 障害状況の把握: 専門家があなたのHDDを診断し、どのような物理障害が起きているのか、データ復旧の可能性はどれくらいあるのかを教えてくれます。これにより、漠然とした不安が解消され、次のステップを検討しやすくなります。
- 概算費用の確認: 診断後には、データ復旧にかかる概算費用を提示してくれます。これにより、予算と照らし合わせながら、復旧を進めるかどうかの判断ができます。
- 複数業者比較の機会: 無料診断を利用して複数の業者に見積もりを依頼することで、費用や復旧の見込み、担当者の対応などを比較検討できます。これは、最も信頼できる業者を選ぶ上で非常に役立ちます。
無料診断を受ける際は、診断内容、診断にかかる期間、診断後のキャンセル料の有無などを事前に確認しておくと安心です。多くの業者が初期診断は無料で実施していますが、詳細な調査が必要な場合は有料になるケースもあります。
物理障害は、適切に対処すればデータ復旧の可能性が十分にあります。焦らず、正しい知識と信頼できる専門家の力を借りて、大切なデータを諦めずに取り戻しましょう。
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最後に、HDDの物理障害に関するよくある質問とその回答をまとめました。あなたが抱える疑問の解決に役立ててください。
よくある質問(FAQ)
データ復旧料金の相場はどのくらいですか?
物理障害を伴うHDDのデータ復旧費用は、障害の程度やHDDの種類、容量によって大きく異なります。一般的には、5万円~80万円以上と非常に幅広いです。軽度な物理障害であれば5万円〜15万円程度、中度で15万円〜30万円程度、ヘッドクラッシュなどの重度な障害では30万円以上かかるケースも珍しくありません。正確な費用は、専門業者による詳細な診断後に出る見積もりで確認できます。
外付けHDDのデータ復旧にかかる費用は、内蔵HDDと違いがありますか?
基本的に、外付けHDDと内蔵HDDで物理障害によるデータ復旧にかかる費用に大きな違いはありません。費用はHDD自体の損傷度合いや復旧の難易度によって決まります。ただし、外付けHDDの場合は、接続部分の故障など、内蔵HDDにはない軽微なトラブルである可能性もゼロではありません。いずれにしても、まずは専門業者に診断を依頼するのが確実です。
データ復旧業者選びで、「格安」を謳う業者には注意が必要ですか?
はい、極端に「格安」を謳う業者には注意が必要です。物理障害のデータ復旧には、クリーンルームのような高価な設備投資と、高度な専門技術を持つエンジニアの人件費がかかります。不当に安い費用を提示する業者は、適切な設備がなかったり、診断後に高額な追加費用を請求したり、最悪の場合、復旧を失敗させてしまうリスクがあります。費用だけで判断せず、復旧実績、設備、対応の明確さなどを総合的に見て信頼できる業者を選びましょう。
データ復旧の料金体系にはどのような種類がありますか?「完全成功報酬制」とは何ですか?
データ復旧の料金体系は、主に「固定料金制」「従量課金制」「成功報酬制」などがあります。物理障害の場合、成果が不確実なため「完全成功報酬制」を採用している業者が多いです。完全成功報酬制とは、データ復旧が成功した場合にのみ費用が発生する仕組みです。復旧できなかった場合は費用がかからないため、依頼者にとってはリスクが少ない安心できる料金体系と言えます。ただし、診断料やキャンセル料が別途発生する場合もあるので、事前に確認することが大切です。
まとめ
本記事では、物理的に壊れてしまったHDDでもデータ復旧を諦める必要はないことをお伝えしてきました。
要点をまとめると以下の通りです。
- HDDの物理障害は、異音、認識不良、OS起動不可などの症状を伴い、非常にデリケートな内部構造が損傷することで発生します。
- 物理障害からのデータ復旧は高度な専門技術とクリーンルームなどの特殊設備を要し、個人での復旧はほぼ不可能です。しかし、多数の成功事例が存在し、諦める必要はありません。
- 復旧費用は障害の重度によって数万円~数十万円と幅広く、無料診断や成功報酬制の業者を選ぶことが費用を抑えるポイントです。
- 障害発生直後は、通電を続けたり、自己判断でHDDを操作したりすることは絶対に避けるべきNG行動です。
- データ復旧を成功させる鍵は、復旧実績が豊富で、クリーンルームを保有し、明確な診断と見積もりを提示する信頼できる専門業者に速やかに依頼することです。
もし今、大切なデータが保存されたHDDに物理障害の兆候が見られるなら、一刻も早く電源を切り、何もせずそのままの状態で専門業者に相談してください。あなたの行動が、失われたデータを取り戻す唯一の希望となります。まずは無料診断を活用し、大切なデータを取り戻すための最初の一歩を踏み出しましょう。
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