NAS導入で社内データを安全に管理・共有する

「社内データが散在していて、どこに何があるかわからない…」「情報共有が非効率で、業務が滞りがち…」「大事なデータなのに、バックアップ体制が不安…」

こんなお悩み、抱えていませんか? 現代ビジネスにおいて、社内データの適切な管理と共有は、もはや企業の生命線と言っても過言ではありません。しかし、クラウドサービスの乱立や個人のPCでのデータ管理など、管理体制が複雑化している企業も少なくないでしょう。

そこで注目されているのが、NAS(ネットワークアタッチトストレージ)です。NASを導入することで、社内データを一元的に管理し、セキュアな環境で効率的に共有することが可能になります。しかし、「NASって何?」「導入するメリットは?デメリットはないの?」「たくさん種類があってどれを選べばいいかわからない」といった疑問をお持ちの方もいるかもしれません。

この記事では、「NAS導入で社内データを安全に管理・共有!メリット・デメリットから選び方まで徹底解説」と題し、NASの基礎知識から導入のメリット・デメリット、さらには自社に最適なNASの選び方や、もしもの時に備えるバックアップ戦略まで、網羅的に解説していきます。

この記事を読み終える頃には、NAS導入の具体的なイメージが掴め、御社のデータ管理体制を劇的に改善するための第一歩を踏み出せるはずです。さあ、安全で効率的なデータ管理の未来へ、一緒に踏み出しましょう!

NASとは?社内データ管理における重要性

NAS(Network Attached Storage)とは、ネットワークに直接接続して利用するファイルサーバーのことで、複数のデバイスから同時にアクセスできるストレージデバイスです。企業や組織内で発生する大量のデータを一元的に管理し、社員間でスムーズに共有するために非常に重要な役割を担います。

NASの定義と仕組み

NASは、その名の通り「ネットワークに接続されたストレージ」であり、ルーターなどを介して社内ネットワークに接続することで、PCやスマートフォン、タブレットなど、ネットワークに繋がった様々なデバイスからファイルの保存や読み込みが行えます。まるで社内に自分だけのクラウドストレージを構築するようなイメージです。

NASは、専用のOSを搭載したコンピューターであり、一般的には複数のハードディスクドライブ(HDD)やSSDを内蔵しています。これらのドライブをRAID(Redundant Array of Independent Disks)と呼ばれる技術で構成することで、データ冗長性を確保し、万が一のドライブ故障時にもデータが失われるリスクを低減できます。

例えば、RAID 1(ミラーリング)では同じデータを2つのドライブに書き込むため、片方のドライブが故障してももう一方のドライブでデータを保護できます。RAID 5やRAID 6といった方式では、より多くのドライブを使って、より高い冗長性とパフォーマンスを実現することも可能です。

NASは、単なる外付けHDDとは異なり、独立したコンピューターとして機能するため、以下のような特徴があります。

  • 複数のユーザーが同時にアクセス可能: ファイルサーバーとして機能するため、複数の社員が同時に同じファイルにアクセスしたり、編集したりできます。
  • アクセス権限の設定: ユーザーごとにフォルダやファイルのアクセス権限を設定できるため、情報漏洩のリスクを低減し、セキュリティを強化できます。
  • 遠隔アクセス: 外部ネットワークから安全にアクセスできる設定をすれば、外出先や自宅からでも社内データにアクセス可能です。
  • 多様な機能: バックアップ機能、メディアサーバー機能、監視カメラの録画機能など、製品によって様々な機能が搭載されています。

社内データ管理の現状と課題

現代のビジネス環境では、日々膨大なデータが生成されています。顧客情報、営業資料、製品設計図、会計データなど、これらのデータは企業の財産であり、その管理方法は企業の競争力に直結します。

しかし、多くの企業では以下のような課題に直面しています。

  • データの散在: 各社員のPCや個別のクラウドストレージにデータが散らばり、どこに最新の情報があるのか、誰が管理しているのかが不明確になることがあります。
  • 情報共有の非効率性: メールやUSBメモリでのファイル共有では、バージョン管理が煩雑になったり、大容量ファイルの送信に時間がかかったりして、業務効率が低下します。
  • セキュリティリスク: 個人PCでのデータ管理や、セキュリティ対策が不十分な共有方法では、マルウェア感染、情報漏洩、紛失といったリスクが高まります。
  • バックアップ体制の不備: データの喪失は事業継続に大きな打撃を与えますが、適切なバックアップ体制が整っていない企業も少なくありません。
  • コストと運用負荷: 複数のストレージサービスやバックアップソリューションを導入すると、コストが増大し、管理者の運用負荷も高まります。

これらの課題を解決し、社内データを安全かつ効率的に管理・共有するためには、NASのような集中管理型のストレージシステムが不可欠です。次章では、NASを導入することで具体的にどのようなメリットが得られるのかを詳しく見ていきましょう。

NASを導入するメリット

前章で触れた社内データ管理の課題に対し、NASは強力なソリューションを提供します。NASを導入することで、単にデータを保存するだけでなく、業務の効率化、セキュリティ強化、そしてコスト削減といった多岐にわたるメリットを享受できます。

データの一元管理とアクセス性向上

NAS導入の最大のメリットは、社内のあらゆるデータを一元的に管理できる点にあります。各社員のPCや外付けHDD、個別のクラウドサービスに散らばっていたデータをNASに集約することで、どこに何があるか不明確になる「データのサイロ化」を防ぎます。

例えば、営業資料やデザインデータなど、複数の社員が参照・更新するファイルをNASに保存すれば、常に最新の情報を共有できます。これにより、「古いバージョンの資料を見てしまった」「特定の社員しかアクセスできないデータがある」といった問題が解消され、業務効率が格段に向上するでしょう。

さらに、NASはネットワーク経由でアクセスするため、社内のどこからでも、また設定次第では社外からでも安全にデータにアクセスできます。出張先から急に資料が必要になった場合でも、NASに接続すればすぐにアクセスできるため、リモートワークやテレワーク環境においてもスムーズな業務遂行を可能にします。

データ共有の効率化

NASは、ファイル共有のプロセスを劇的に効率化します。メールに添付して送るには大きすぎるファイルや、複数人での共同作業が必要なプロジェクトファイルでも、NASに保存しておけば、共有リンクを発行したり、直接アクセスさせたりするだけで済みます。

特に、デザイン会社で大容量の画像や動画ファイルを扱う場合や、建築会社でCADデータなどの重い図面ファイルを共有する必要がある場合、NASの導入は必須と言えるでしょう。各社員がNAS上のファイルに直接アクセスして編集できるため、ファイルのダウンロードやアップロードの手間が省け、作業時間の短縮に繋がります。

また、NASはユーザーごとに細かくアクセス権限を設定できるため、「このフォルダは経理部のみアクセス可能」「このファイルは閲覧のみで編集不可」といった柔軟な設定が可能です。これにより、誤操作によるデータ破損や、意図しない情報漏洩のリスクを最小限に抑えつつ、必要な人だけが必要な情報にアクセスできる環境を構築できます。

セキュリティとBCP対策

NASは、社内データのセキュリティと事業継続計画(BCP)の観点からも非常に有効なツールです。NASには通常、RAID(Redundant Array of Independent Disks)機能が搭載されており、複数のHDDを組み合わせてデータを分散・複製することで、万が一のドライブ故障時にもデータを保護できます。

例えば、RAID 1(ミラーリング)では同じデータを2つのHDDに書き込むため、片方のHDDが故障しても、もう一方のHDDで業務を継続できます。これにより、HDD故障によるダウンタイムを最小限に抑え、事業への影響を軽減することが可能です。

さらに、NASにはアクセスログの取得機能や、暗号化機能、ウイルス対策機能などを搭載している製品も多く、より堅牢なセキュリティ体制を構築できます。不審なアクセスを監視したり、重要なデータを暗号化したりすることで、外部からのサイバー攻撃や内部不正による情報漏洩リスクを低減し、企業の信頼性を守ります。

災害対策や事業継続の観点では、NASに保存されたデータを遠隔地の別のNASやクラウドストレージに自動でバックアップする機能も利用できます。これにより、本社のNASが被災した場合でも、遠隔地のバックアップからデータを復旧し、速やかに業務を再開することが可能になり、企業のレジリエンスを高めることができます。

コスト削減と運用負荷軽減

NASの導入は、長期的に見てコスト削減と運用負荷軽減に繋がるケースが多くあります。個々のPCや外付けHDDにデータを保存している場合、容量不足のたびに新しいストレージを購入したり、それぞれのバックアップを個別に管理したりする必要があり、これが隠れたコストや手間になります。

NASであれば、一元的な管理が可能なため、これらの手間を削減できます。また、クラウドストレージサービスを利用する場合、利用ユーザー数やデータ容量に応じて月額費用が発生し、ランニングコストが膨らむ可能性があります。NASは初期投資が必要ですが、一度導入すれば月額費用がかからず、長期的な視点で見ればクラウドサービスよりも総コストを抑えられる可能性があります。

さらに、NASは専門的なIT知識がなくても比較的容易に導入・運用できるよう設計されている製品が多く、IT管理者の負担を軽減できます。初期設定ウィザードや直感的なWebインターフェースを備えているため、専門のIT担当者がいない中小企業でも安心して導入を検討できます。

これらのメリットを総合的に考慮すると、NASは社内データの安全な管理と共有、そして企業の生産性向上に不可欠なツールと言えるでしょう。次の章では、NASを導入する際に考慮すべき注意点やデメリットについて解説します。

NAS導入時の注意点とデメリット

NASは社内データ管理に多くのメリットをもたらしますが、導入を検討する際には、いくつかの注意点やデメリットも理解しておくことが重要です。これらを事前に把握しておくことで、後悔のない適切なNAS選びと、安定した運用が可能になります。

初期費用と運用コスト

NAS導入にあたり、まず考慮すべきは初期費用です。NAS本体の価格は、搭載するHDDの数や性能、機能によって大きく変動します。特に、ビジネス向けの高性能なNASや、大容量を必要とする場合は、数十万円から数百万円程度の初期投資が必要になることもあります。

さらに、NASは購入して終わりではありません。NAS本体に加え、以下のような運用コストも発生します。

  • HDD/SSDの費用: NASに内蔵するストレージは別途購入が必要です。容量や性能、信頼性の高いものを選択すると、それなりの費用がかかります。また、HDDやSSDには寿命があるため、定期的な交換費用も考慮に入れる必要があります。
  • 電力消費: NASは24時間稼働が基本となるため、継続的に電力を消費します。使用するNASのモデルやディスクの本数によって異なりますが、電力料金も運用コストの一部として計上すべきです。
  • ネットワーク環境の整備: NASの性能を最大限に引き出すためには、ギガビットイーサネット以上の高速なネットワーク環境が推奨されます。必要に応じて、ルーターやスイッチングハブなどのネットワーク機器のアップグレード費用も発生する可能性があります。
  • メンテナンス費用: 導入後の定期的なファームウェアアップデート、設定の見直し、トラブルシューティングなど、運用にかかる人件費や、場合によっては外部のITサポートサービスの費用も考慮しましょう。

クラウドストレージと比較した場合、月額課金制のクラウドサービスと異なり、NASは初期費用がかかるものの、長期的に見ればトータルコストを抑えられる可能性があります。しかし、短期間での利用や、データ容量が極端に少ない場合は、クラウドサービスの方が費用対効果が高いケースもあります。自社の予算と長期的なデータ運用計画に基づいて、慎重に比較検討することが重要です。

障害発生時のリスクと対策

NASはRAID機能によってデータの冗長性を高めていますが、完全に障害リスクがないわけではありません。HDDの故障はもちろん、NAS本体の故障、ネットワークトラブル、停電、さらにはサイバー攻撃や自然災害など、様々な要因でデータにアクセスできなくなったり、データが失われたりするリスクは常に存在します。

特に注意すべきは、NASが単一障害点(SPOF)となる可能性がある点です。NASが停止すると、社内のデータ共有や業務が完全にストップしてしまうため、事業継続に甚大な影響を及ぼしかねません。

このようなリスクに備えるためには、以下のような対策が不可欠です。

  • 定期的なバックアップ: RAIDはあくまでもHDD故障に対する冗長性であり、誤削除、ウイルス感染、ランサムウェア攻撃などからはデータを保護できません。NASに保存されているデータは、さらに別のストレージ(別のNAS、外付けHDD、クラウドストレージなど)に定期的にバックアップを取ることが極めて重要です。最低でも「3-2-1ルール」(データ3コピー、2種類のメディア、1つはオフサイト)に従ったバックアップ戦略を検討しましょう。
  • 冗長化の検討: 重要なデータやシステムでは、NASそのものの冗長化も検討する価値があります。例えば、二重化されたNASを導入したり、フェールオーバー機能を持つモデルを選んだりすることで、NAS本体の故障時にも自動的に切り替わり、サービス停止時間を最小限に抑えることができます。
  • 監視体制の構築: NASの状態を常時監視し、異常を早期に検知できる体制を構築しましょう。ディスクのエラー発生や温度上昇などをアラートで通知する機能を持つNASもあります。
  • 災害対策(BCP): 地震や洪水などの自然災害に備え、NASの設置場所の検討、耐震対策、電源の安定化(UPS導入)はもちろん、遠隔地へのオフサイトバックアップなど、事業継続計画(BCP)に基づいた対策を講じることが重要です。

これらの対策を怠ると、せっかくNASを導入しても、データ喪失や業務停止といった最悪の事態を招きかねません。導入前に十分なリスク評価と対策の検討を行いましょう。

適切なモデル選びの重要性

NASの市場には、個人向けからエンタープライズ向けまで、非常に多種多様なモデルが存在します。自社のニーズに合わないNASを選んでしまうと、導入効果が半減したり、後から運用に支障をきたしたりする可能性があります。

例えば、社員数に対してNASの処理能力が不足している場合、アクセスが集中した際に動作が遅くなったり、ファイル転送に時間がかかったりして、かえって業務効率が低下する可能性があります。また、必要な容量を見誤り、すぐに容量不足に陥ってしまっては、追加投資が必要になります。

一方で、オーバースペックなNASを選んでしまうと、不要な機能や過剰な性能に対して費用を支払うことになり、コストが無駄になるケースもあります。特に、高機能なモデルほど初期費用が高くなる傾向にあるため、注意が必要です。

NAS選びでは、以下の点を事前に明確にしておくことが重要です。

  • 利用人数: 同時にNASにアクセスする社員数やデバイス数。
  • データ容量: 現在のデータ量と、今後数年間のデータ増加予測。
  • 必要な機能: バックアップ機能、遠隔アクセス、特定アプリケーションとの連携など。
  • 予算: 初期費用と運用コストを含めた総予算。
  • 管理体制: 専門のIT担当者がいるか、外部に委託するか。

これらの要素を考慮せずに安易にNASを選んでしまうと、期待した効果が得られないどころか、新たな問題を引き起こす可能性もあります。次の章では、これらの注意点を踏まえた上で、自社に最適なNASを選ぶための具体的なポイントと導入ステップについて詳しく解説します。

NASの選び方と導入ステップ

NAS導入のメリットとデメリットを理解したところで、いよいよ自社に最適なNASを選ぶための具体的なポイントと、導入から運用までのステップを見ていきましょう。適切なNASを選び、計画的に導入を進めることが、その効果を最大限に引き出す鍵となります。

容量と性能の選定

NASを選ぶ上で最も基本的な要素が、必要なデータ容量と処理性能です。これらは、現在のデータ量だけでなく、将来的なデータ増加の予測、そして利用するユーザー数やアクセス頻度によって大きく変わってきます。

まず、データ容量については、以下の点を考慮して算出しましょう。

  • 現在のデータ総量: 社内で利用しているファイルの総容量を把握します。個人PC、既存のファイルサーバー、クラウドストレージなど、分散しているデータもすべて含めて計算します。
  • 今後のデータ増加予測: 事業の拡大や新しいプロジェクトの開始などにより、今後1年、3年、5年でデータがどの程度増えるかを予測します。特に動画や画像など、容量の大きいファイルを扱う場合は、余裕を持った容量計画が重要です。
  • RAID構成による実効容量: NASはRAIDを組むことで冗長性を確保しますが、その分、搭載するHDDの合計容量すべてが利用できるわけではありません。例えば、RAID 1(ミラーリング)では2台のHDDのうち1台分の容量しか使えません。RAID 5やRAID 6では、より多くのHDDを使いますが、その分パリティ領域が必要になります。必要な実効容量に対して、どのRAID構成にするかを考慮し、適切な台数のHDDを搭載できるNASを選びましょう。

次に、処理性能については、主に搭載されているCPU、メモリ、ネットワークインターフェース(LANポート)の仕様を確認します。

  • CPUとメモリ: NASの処理能力を左右する重要な要素です。同時にアクセスするユーザー数が多い場合や、大容量ファイルの転送、リアルタイムでのデータ処理(例: 動画のトランスコーディングなど)を行う場合は、高性能なCPUと十分なメモリを搭載したモデルを選びましょう。中小企業であればデュアルコアCPU、大規模な環境や高負荷な用途ではクアッドコア以上のCPUが推奨されます。
  • ネットワークインターフェース: 一般的にはギガビットイーサネット(1GbE)に対応していますが、より高速なデータ転送が必要な場合は、2.5GbE、5GbE、10GbEに対応したモデルを検討しましょう。特に、動画編集やCADなど、大容量ファイルを頻繁にやり取りする業務では、ネットワーク速度が作業効率に直結します。

これらの要素は、NASの価格に大きく影響するため、予算とのバランスを考慮しながら、過不足のないスペックを選定することが重要です。

機能と拡張性の確認

単にファイルを保存するだけでなく、NASが提供する多様な機能と将来的な拡張性も選定の重要なポイントです。

  • バックアップ機能: NAS自身のデータを別のストレージやクラウドにバックアップする機能は必須です。自動バックアップ、増分バックアップ、世代管理など、どのような機能が提供されているかを確認しましょう。
  • 遠隔アクセス・クラウド連携: 社外からの安全なアクセスや、既存のクラウドストレージ(OneDrive, Google Drive, Dropboxなど)との連携機能は、リモートワークやハイブリッドワーク環境で非常に役立ちます。VPN機能や専用のクラウドサービスとの連携機能があるかを確認しましょう。
  • セキュリティ機能: アクセス権限のきめ細やかな設定、IPアドレス制限、二段階認証、暗号化、ファイアウォール機能、アンチウイルス機能など、セキュリティを強化するための機能が充実しているかを確認します。
  • アプリケーション連携: Webサーバー、データベースサーバー、監視カメラの録画、仮想化サポートなど、ビジネスに必要な特定のアプリケーションをNAS上で動作させたい場合は、その機能に対応しているかを確認しましょう。
  • 拡張性: 将来的にデータ容量を増やせるか(HDDベイの数)、メモリの増設が可能か、高速なネットワークカードを追加できるかなど、事業の成長に合わせてNASをスケールアップできるかどうかも考慮しておくと安心です。

信頼性とサポート体制

NASは企業の重要なデータを管理するため、製品自体の信頼性と、万が一の際のサポート体制が非常に重要です。

  • メーカーの信頼性: NAS専門メーカーや、実績のある大手メーカーの製品を選びましょう。長期的なファームウェアアップデートの提供や、セキュリティパッチの迅速な提供があるかどうかも確認ポイントです。
  • 保証期間とサポート内容: 製品の保証期間、故障時の修理対応、電話やメールでの技術サポートの有無、対応時間などを事前に確認しておきます。特に、法人向けモデルであれば、オンサイト保守サービスやデータ復旧サービスを提供している場合もあります。
  • 稼働実績と評価: 実際にそのNASを使用している企業の声や、レビューサイトでの評価などを参考にすることも有効です。

安価な製品に飛びつきがちですが、トラブル発生時の対応やデータの安全性に関わる部分なので、信頼性を最優先に考えるべきでしょう。

導入後のデータ移行と運用体制

NAS導入を決定したら、具体的なデータ移行と運用体制の確立が次のステップとなります。

データ移行:

既存のファイルサーバーや各PCに分散しているデータをNASに移行する作業は、非常に重要かつ慎重に行う必要があります。データ量が多い場合は、一括で移行するのではなく、部署ごとや種類ごとに段階的に移行する計画を立てるのが賢明です。

  • 移行計画の策定: どのデータを、いつ、誰が、どのように移行するかを明確にします。
  • データ重複の排除と整理: 移行前に不要なデータを削除したり、重複しているファイルを整理したりすることで、NASの容量を効率的に利用できます。
  • アクセス権限の設計: 移行先のNASで、どのユーザーにどのフォルダへのアクセス権限を与えるか、詳細に設計します。
  • テスト移行と検証: 少量のデータを事前に移行し、問題なくアクセスできるか、権限設定が正しいかなどを検証します。
  • 本番移行とバックアップ: 移行中はデータの破損リスクがあるため、移行前のデータのバックアップを必ず取得しておきましょう。

運用体制:

NASは導入して終わりではなく、安定した運用を継続するためには、適切な体制が必要です。

  • 管理者の配置: NASの監視、定期的なメンテナンス(ファームウェアアップデート、ディスク状態の確認など)、ユーザー管理、トラブルシューティングなどを行う担当者を決めましょう。専門のIT担当者がいない場合は、外部の専門業者への委託も検討できます。
  • バックアップルールの策定: データのバックアップ頻度、保存先、保存期間などを明確にしたルールを策定し、確実に実行します。
  • 利用ルールの周知: 社員全員にNASの利用方法やアクセス権限のルールを周知徹底し、誤操作によるデータ破損や情報漏洩を防ぎます。
  • 障害発生時の対応フロー: 万が一NASに障害が発生した場合の連絡先、復旧手順などを明確にし、担当者間で共有しておきましょう。

これらのステップを計画的に進めることで、NASの導入は成功し、御社のデータ管理は格段に向上するでしょう。次の章では、NASのデータをさらに安全に守るためのバックアップ戦略について掘り下げていきます。

NASのバックアップ戦略

NASを導入し、社内データを一元管理できるようになったとしても、それでデータ保護が万全になったわけではありません。前章でも触れたように、NASのRAID機能はHDDの故障には対応できますが、誤削除、ウイルス感染、ランサムウェア攻撃、自然災害など、あらゆるデータ損失リスクからデータを完全に守るものではありません。NASに保存されたデータも、定期的なバックアップが不可欠です。

なぜNASのバックアップが必要なのか

NASはデータの冗長性を高めるためのRAID機能を備えていますが、これはあくまで「複数のディスクのうち1台または2台が故障してもデータが失われない」ための仕組みです。RAIDはバックアップの代わりにはなりません。

NASのバックアップが必要な主な理由は以下の通りです。

  • 誤削除・上書き: ユーザーが誤って重要なファイルを削除したり、上書きしてしまったりするヒューマンエラーは日常的に起こり得ます。バックアップがあれば、削除前の状態に簡単に戻せます。
  • ランサムウェア・マルウェア攻撃: サイバー攻撃によってNAS内のデータが暗号化されたり、破壊されたりするリスクがあります。バックアップがなければ、身代金を支払うか、データを諦めるしかありません。
  • NAS本体の故障: HDDではなく、NAS本体の基盤や電源部が故障した場合、RAIDが機能していてもデータにアクセスできなくなる可能性があります。
  • 自然災害・火災: 地震、洪水、火災などでNASが物理的に破壊された場合、RAIDがあってもデータは失われます。特に、NASが設置されている建物全体が被災した場合、復旧は極めて困難になります。
  • 盗難: NASが盗難に遭った場合、データは物理的に失われます。

これらのリスクからビジネスを守り、事業継続性を確保するためには、NASとは独立した場所に、定期的にデータをバックアップする体制を構築することが、企業のIT戦略における最重要事項の一つと言えます。

最適なバックアップ方法の選択肢

NASのバックアップには、様々な方法があります。自社のデータ量、予算、必要な復旧時間(RTO/RPO)、セキュリティ要件などを考慮して、最適な方法を選択しましょう。一般的に推奨されるのは、複数のバックアップ方法を組み合わせる「3-2-1ルール」です。

3-2-1ルールとは:

  1. データのコピーを3つ持つ(オリジナル+2つのバックアップ)。
  2. 異なる2種類のメディアに保存する(例:NAS本体と外付けHDD、NAS本体とクラウド)。
  3. 1つはオフサイト(遠隔地)に保存する。

このルールに従うことで、万が一の事態に備え、高いレベルでデータを保護できます。

具体的なNASのバックアップ方法としては、以下の選択肢が挙げられます。

1. 別のNASへのバックアップ(NAS to NAS)

NASの多くは、別のNASへデータを自動で同期・バックアップする機能を備えています。同じネットワーク内や、VPN経由で遠隔地のNASへもバックアップが可能です。

  • メリット: 設定が比較的容易、高速なデータ転送が可能、リカバリが早い。
  • デメリット: もう一台NASを購入する必要があるため、初期費用がかかる。物理的な災害(地震、火災など)で両方のNASが被災するリスクがある。

活用例: 拠点ごとにNASを設置し、お互いにバックアップを取り合う、あるいは本社にバックアップ専用のNASを設置する。

2. 外付けHDD/SSDへのバックアップ

NASに直接USB接続できる外付けHDDやSSDにデータをバックアップする方法です。手軽に導入できるのが特徴です。

  • メリット: 安価に導入できる、設定がシンプル。
  • デメリット: 手動での接続・操作が必要になる場合がある、大容量のバックアップには時間がかかる、物理的な保管場所の管理が必要。

活用例: 毎日、または毎週の定期バックアップとして、業務終了後に接続し、バックアップを実行。バックアップ完了後は、HDDをNASから切り離し、安全な場所に保管する(オフサイト保管を推奨)。

3. クラウドストレージへのバックアップ

NASのデータを、Google Drive、Microsoft OneDrive、Amazon S3、Dropboxなどのクラウドストレージサービスにバックアップする方法です。多くのNASが、主要なクラウドサービスとの連携機能を搭載しています。

  • メリット: オフサイトバックアップが容易に実現できる、物理的な災害リスクが低い、初期投資を抑えられる(月額課金)。
  • デメリット: データ転送速度がインターネット回線に依存するため、大容量のバックアップには時間がかかる場合がある、月額費用が発生する。

活用例: 重要な基幹データや、災害時に特に優先して復旧したいデータをクラウドにバックアップ。日々の更新データは増分バックアップで効率的に転送する。

4. テープドライブへのバックアップ

LTO(Linear Tape-Open)などのテープドライブは、大容量データの長期保存に適しており、特に大規模企業で利用されています。

  • メリット: 大容量データを安価に長期保存できる、オフラインで保管するためセキュリティが高い。
  • デメリット: 初期費用が高い、専用のソフトウェアと操作が必要、リストアに時間がかかる。

活用例: 法令順守のために長期保存が必要なデータや、アクセス頻度は低いが大容量のアーカイブデータなどのバックアップ。

これらのバックアップ方法の中から、自社のデータ特性やリスク許容度、予算に応じて最適な組み合わせを選びましょう。例えば、日々の業務データはNAS to NASで高速にバックアップし、さらに重要なデータはクラウドへオフサイトバックアップするといった複合的な戦略が有効です。バックアップは、一度設定したら終わりではなく、定期的にリストア(復元)テストを行い、データが確実に復旧できることを確認するまでが「バックアップ戦略」の一部であることを忘れないでください。次の章では、NAS導入に関するよくある質問にお答えします。

よくある質問(FAQ)

NASのデメリットは?

NASの主なデメリットは、初期費用と運用コストがかかる点、そして障害発生時に業務が停止するリスクがある点です。NAS本体の購入費やHDD/SSDの費用に加え、電気代やメンテナンス費用も発生します。また、RAID機能でHDD故障には強いものの、NAS本体の故障や、誤削除、サイバー攻撃、自然災害などによってデータが失われるリスクはゼロではありません。そのため、後述するバックアップ戦略が不可欠です。

NASの寿命は何年ですか?

NAS本体の寿命は、メーカーや使用環境、モデルによって異なりますが、一般的には5年〜10年程度とされています。ただし、NASの構成要素であるHDD(ハードディスクドライブ)は消耗品であり、通常2〜5年程度で故障する可能性が高まります。NAS本体が問題なくても、HDDは定期的な交換が必要です。導入後の安定稼働のためには、計画的なHDD交換や買い替えを検討しましょう。

NASはバックアップなしでも大丈夫?

いいえ、NASもバックアップなしでは絶対に大丈夫ではありません。NASのRAID機能は、内蔵されているHDDの一部が故障してもデータを保護する仕組みであり、バックアップとは役割が異なります。誤ってファイルを削除してしまったり、ランサムウェアに感染してデータが暗号化されたり、あるいはNAS本体が故障したり、自然災害で被災したりした場合、RAIDだけではデータを復旧できません。重要なデータは、NASとは別の場所に定期的にバックアップを取ることが必須です。

NASのバックアップは何がいい?

NASのバックアップには、主に別のNAS、外付けHDD/SSD、クラウドストレージ、テープドライブといった選択肢があります。推奨されるのは、これらの方法を組み合わせる「3-2-1ルール」です。例えば、社内の別のNASに高速な日次バックアップを取りつつ、特に重要なデータや長期保存が必要なデータはクラウドストレージにオフサイトバックアップするといった複合的な戦略が、安全性と利便性のバランスが取れていておすすめです。

まとめ

本記事では、社内データの安全な管理・共有に不可欠なNASについて、その基礎知識からメリット・デメリット、そして最適な選び方や導入後のバックアップ戦略まで幅広く解説しました。

NASを導入することで、以下のメリットが得られます。

  • データの一元管理とアクセス性向上
  • データ共有の効率化
  • セキュリティとBCP対策
  • コスト削減と運用負荷軽減

一方で、初期費用や障害リスク、適切なモデル選びの重要性といった注意点も理解し、「3-2-1ルール」に基づくバックアップ戦略で大切なデータを多重に保護することが何よりも重要です。

社内データの安全性を高め、業務効率を飛躍的に向上させるNASの導入は、もはや現代ビジネスにおいて避けて通れない課題です。この機会に、ぜひ貴社のデータ管理体制を見直し、最適なNAS導入へと踏み出しましょう。安全で効率的なデータ管理が、企業の未来を盤石なものにします。

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